コーヒー豆知識
ネルドリップとは?お手入れ方法や必要な器具、淹れ方を解説!
「ネルドリップとは何なのかよく分からない」
「ネルドリップと普通のドリップコーヒーの違いが分からない」
このような方もいるのではないでしょうか。
本記事ではネルドリップとは何かについて解説します。ネルドリップの特徴やフィルターのお手入れ方法、必要な器具、淹れ方についてまとめました。
本記事を読むことでネルドリップで淹れたコーヒーを楽しめるようになります。ネルドリップに興味がある方はぜひお読みください。
ネルドリップとは?

ネルドリップとは、布製のフィルターを使ってコーヒーを抽出する方法を指します。具体的にはフランネルと呼ばれる、柔らかくて軽い毛織物を使います。フランネルは寝具や洋服、スーツなどさまざまなところで使われています
ネルのフィルターを使うことで、コーヒーがまろやかな味になるのが特徴です。また、ネルフィルターは紙と違って使い捨てではなく、何回も洗って繰り返し使うことができます。
ネルドリップはドリップ式の一種であると言えます。ドリップ式とは、コーヒー粉に熱湯を注ぎ、フィルターを通して抽出する淹れ方のことです。ドリップ式で使われるフィルターは紙やステンレスで作られたものが多いですが、ネルもよく使われています。
ドリップ式によって作られたコーヒーはドリップコーヒーと呼ばれています。ドリップコーヒーは日本で特に多く飲まれています。
ドリップ式は一般的な方法ですが意外に奥深いのが特徴です。お湯の温度や注ぐスピード、蒸らす時間などによって、コーヒーの味わいや風味が大きく変わります。初心者の場合、コーヒーを思い通りの味にできないこともあります。
それもあって、初心者でもおいしいコーヒーを簡単に作ることができる、コーヒーメーカーも多く販売されています。コーヒーメーカーを使えば手軽にドリップコーヒーを淹れられます。ただし、ネルフィルターに対応しているコーヒーメーカーはほとんどありません。多くのコーヒーメーカーは、ペーパーフィルターやステンレスフィルターを採用しています。
ネルドリップの特徴

ネルドリップの特徴として次の2つが挙げられます。
- 使い切りではなく何度も使える
- 起毛側を外にするか内にするかで口当たりや味わいが変わる
ひとつひとつの特徴について詳しくみていきましょう。
使い切りではなく何度も使える
ネルドリップに使うネルフィルターは、一度使って捨てるのではなく、洗って何回も使えます。そのため、ペーパーフィルターに比べてランニングコストを抑えられます。また、エコの観点から言ってもネルドリップは優れていると言えます。
ただし、お手入れや保管の手間がかかるのがデメリットです。洗った後は細菌が繁殖しないように適切に保管する必要があります。
起毛側を外にするか内にするかで口当たりや味わいが変わる
製品にもよりますが、ネルフィルターにはケバケバした起毛の面とそうではない面があります。起毛の面を外にするか内にするかで、コーヒーの口当たりが変わると言われています。
起毛面を内側にしてコーヒーを淹れると、滑らかな舌触りを感じられます。起毛面がコーヒーの微粉を多くキャッチしてくれるためです。一方で起毛面を外側にすると、微粉をあまりキャッチしてくれないため、ざらざらとした舌触りを感じられるようになります。
また、起毛面を外にするか内にするかで、味わいも変化します。コーヒー豆には油分(コーヒーオイル)が含まれています。起毛面を内側にする場合、ネルフィルターが油分の多くを吸着するため、コーヒーがすっきりした味わいになります。一方で起毛面を外側にする場合、油分をあまり多く吸着せず、まったりとした味わいになります。
起毛面を外にするか内にするかについては、どちらが正解かなどはないので、好みに応じて選ぶと良いでしょう。
ただし、起毛面を内側にすると、微粉を多くキャッチする分、お手入れの際は微粉をしっかり取り除かないといけなくなります。丁寧に洗うことを繰り返した結果、ネルフィルターの寿命が早まってしまう可能性があるのがデメリットです。
ネルドリップでコーヒーを淹れる際に必要な器具

ネルドリップでコーヒーを淹れる際に必要なものは下記の通りです。
- コーヒー豆
- コーヒーミル(コーヒーグラインダー)
- ドリッパー
- 計量はかり
- ネルフィルター
- やぐら・専用コーヒーサーバー
- ドリップポット
これらの器具を揃えておくと、スムーズにコーヒーを淹れられるでしょう。コーヒーを豆から淹れたい場合は、コーヒーミルを準備する必要があります。
ネルドリップは特にコーヒーの種類を問わないので、コーヒー豆に関しては普段使っているものでも問題ありません。
ただ、ネルドリップ(特にフィルターの起毛面を外側にした場合)は、油脂分を抽出できる点が特徴で、中深炒り〜深炒りのコーヒーに本来ある強い苦みを油脂分が丸くして飲みやすくしてくれます。そのため、深炒りのコーヒーをおいしく楽しむのに特におすすめです。
また、中細挽きがドリップ式には適していると言われています。
必要な器具の中でもネルドリップを淹れる際に重要な、ネルフィルター・やぐら・ドリップポットの3つについて詳しく解説していきます。
ネルフィルター
ネルフィルターは、フランネルという布で作られたフィルターです。ネルフィルターがないとネルドリップで淹れることはできないので、必ず準備しましょう。
家庭用のネルフィルターの場合、1〜3杯用のものが多いです。また、ネルフィルターはハンドル付きの輪っかに装着して使うのが一般的です。
やぐら・専用コーヒーサーバー
ネルフィルターは柔らかくて自立できないので、お湯を注いでいる間は手で持つか、何かしらで固定する必要があります。ネルフィルターを固定するのに使うのが「やぐら」です。「やぐら」があればネルフィルターを手で持たなくて良くなり、お湯を注ぎやすくなります。
また、ネルドリップ専用のコーヒーサーバーを購入する手もあります。ネルドリップ専用のコーヒーサーバーは、ネルフィルターを置いて固定するための長い首が付いています。
ドリップポット
ネルドリップでコーヒーを淹れるにはドリップポットがあった方が良いです。ドリップポットは注ぎ口が細くなっているやかんで、細口ポットや細口ケトル、コーヒーケトルなどとも呼ばれています。
ドリップポットは注ぎ口が細いため、湯のコントロールがしやすくなります。湯量を微調整したり、コーヒー粉全体にお湯が行き渡るようにしたりすることが可能です。
ネルドリップでのコーヒーの淹れ方

続いて、ネルドリップでのコーヒーの淹れ方について解説します。ネルドリップでコーヒーを淹れる基本的な手順は下記のとおりです。
- ネルフィルターを軽く水洗いする
- ネルフィルターをセットする
- 蒸らす
- ドリップする
ひとつひとつの手順について詳しく解説していきます。
1.ネルフィルターを軽く水洗いする
購入したばかりのネルフィルターは軽く水洗いすることが大事です。未使用のネルフィルターは布独特の匂いがあったり、糊や汚れなどが付着していたりすることがあるためです。
また、軽く水洗いしたら、コーヒー液で20分程度煮ておきます。こうすることで、コーヒーを馴染ませやすくなります。
2.ネルフィルターをセットする
続いて、ネルフィルターを専用のハンドルにセットします。ネルフィルターには一度熱湯を通します。その後、乾いた布巾などで水気を切ってからもう一度セットします。
湯通しはフィルターの種類に関わらず行われる場合が多いです。湯通しを行うことで、抽出中の温度変化をなるべく減らし、コーヒーの味を安定させやすくなります。
3.蒸らす
ネルフィルターをセットしたら、あらかじめ挽いておいたコーヒー粉を入れて、蒸らしを行います。まず92〜96℃のお湯を用意します。やかんでお湯を沸騰させて、ドリップポットに移し替えるとだいたい適温になります。
コーヒー粉全体に20ml程度の少量のお湯を注ぎます。蒸らしを行うことで、コーヒー粉に含まれる炭酸ガスが抜けて全体にお湯を通しやすくなり、ムラなく抽出することが可能です。
4.ドリップする
蒸らしが終わったらコーヒーをドリップします。ドリップ式では、数回に分けてお湯を注いでドリップするのが基本です。一度に大量のお湯を注ぐとコーヒー粉全体にお湯が行き渡らず、抽出が偏ってしまう場合があるためです。
あくまで一例ですが、数回に分けてお湯を注ぐ場合、次のような配分にします。
コーヒー粉を10g使う場合は、まず80mlのお湯を注ぎます。水面がやや下がるタイミングで40mlのお湯を注ぎ、再び下がったら20mlのお湯を注ぎます。蒸らしも合わせて、合計160ml程度のお湯を注ぎます。
抽出時のポイントは、中心から「の」の字を描くようにゆっくりとお湯を注ぐことです。こうすることで、成分が均等に抽出されやすくなります。
ドリップが完了したら、コーヒーサーバーからカップに注ぎます。カップに注ぐ前に、あらかじめカップを温めておくとコーヒーの温度が下がらなくなります。
使用後のネルフィルターをお手入れする方法

使用後のネルフィルターはしっかりお手入れする必要があります。そのままで放置すると、コーヒーの油脂分が酸化して、匂いが取れなくなってしまうこともあります。また、雑菌の繁殖にも繋がってしまいます。
使用後はコーヒーが出なくなるまでしっかりもみ洗いします。油脂分の酸化を防ぐために冷水に漬け、冷蔵庫に入れて保管するのが基本です。保管後は冷水を毎日取り替えることをおすすめします。
また、ネルフィルターを長期間使用しないなら、冷凍庫に保管するのがおすすめです。冷凍庫に保管すれば、水を毎日取り替える手間をなくせます。冷凍する場合は、水でもみ洗いしてよく絞ったネルフィルターをジップロックなどに入れて保管しましょう。
冷凍したネルフィルターは、水にさらせばすぐに解凍できます。
ネルフィルターの交換タイミング
あくまで目安ですが、ネルフィルターは40〜50回程度使ったら交換するのがおすすめです。ネルフィルターは使っていくと、お手入れでは取り切れなかったコーヒーの油脂分などが溜まっていくようになります。その結果、湯通りが悪くなってしまうこともあります。
適切なタイミングでネルフィルターを交換すれば、思い通りに抽出できず、コーヒーの味が変わってしまうこともありません。
まとめ
本記事ではネルドリップについて解説しました。ネルドリップの特徴や必要な器具、具体的な淹れ方などがお分かりいただけたかと思います。
ネルドリップで淹れることで、まったりとした口当たりのコーヒーを楽しめます。ペーパーフィルターだとコーヒーの油分を吸着してしまいますが、ネルフィルターは油分を通してくれるためです。普段と異なる口当たりを楽しみたい方は、ネルドリップに挑戦してみましょう。
ただし、ネルドリップはお手入れや保管の手間がかかるのがデメリットです。使い終えたネルフィルターはしっかりもみ洗いし、冷水に漬けて冷蔵庫で保管する必要があります。冷水を毎日取り替えるのも手間がかかります。しばらくネルフィルターを使わないなら、冷凍保管した方が冷水を取り替える必要がなくておすすめです。
また、ネルドリップで淹れる際は、ネルフィルターを固定するための「やぐら」や専用コーヒーサーバーを購入することをおすすめします。
これらのポイントを意識して、ネルドリップでコーヒーを淹れることを試してみましょう。