きれいな酸味のある、シーンレスなおいしさ
村田:今回開発した「ディーン& デルーカブレンド」は、フルーティーな酸味やニュアンスのある甘味を意識した味わいに仕上がりましたね。
田中:はい。家庭用のコーヒーの抽出マシンだとパンチを出すために苦味やコクにフィーチャーする味わいになりがちだと感じるのですが、DRIP PODはきれいな酸味や甘さを素直に出せるのが魅力だと思っています。今回のディーン& デルーカブレンドも、酸味といっても決して尖った味ではなく、いつ、どこで飲んでもおいしく、シーンレスに楽しめるものを目指しました。
村田:今回はフルーティーで甘味が特徴のホンジュラス「エルプエンテ農園」の豆をベースに、ルワンダやブラジルのスペシャルティコーヒーをブレンドしています。それぞれのコーヒー豆の魅力を引き出しつつ、特定の産地の風味だけが突出しすぎるのではない、バランスのとれた味わいに仕上がっていると思います。
田中:最初はブレンドではなくシングルオリジンで、という議論もあったんですよね。でもやはりバランスというものを考えてホンジュラスとはまた違った、さわやかなグリーンを感じられるルワンダ、落ち着きのあるブラジルを組み合わせました。
村田:酸味の強い味わいは現在のトレンドではあるのですが、やはりいつでも飲みたくなるものにするために、穏やかな印象にしています。それでも個性を感じられておいしい、絶妙なバランスを実現できました!
田中:そうですね。DEAN & DELUCAはハレの日のイメージが強いと思いますが、もっと日常で楽しんでもらえる存在でありたいと考えているので、今回のコーヒーカプセルはそのきっかけとなる理想的な仕上がりになったと思います。
村田:日常やシーンレスをコンセプトにした背景には、どんな考えがあったのでしょう?
田中:やはり新型コロナの流行は大きかったかもしれません。社会的な変化によって「暮らしにおいて何を大切にするか」という優先順位が多くの人の中で明確になったことで、日常で選ばれるもの、エッセンシャルなブランドであることの大事さを実感しました。
村田:UCCは「おいしいコーヒーのある日常を多くの人に楽しんでほしい」という想いが強いので、その点に共感していただいたということですね。
田中:はい。DRIP PODのフラグシップモデルである「DRIP POD YOUBI」というマシンの開発を一緒にしたこともあり、UCCさんの生産者へのリスペクトの姿勢や、味に対するこだわりなど、共感する部分が多いこともありました。
村田:むしろ、社員ひとりひとりの生産者やコーヒーへの愛が強すぎるかもしれません(笑)。
田中:UCCさんのような大きな企業で、ここまで全員が真面目に味に向き合っているところは珍しいと思います。だからこそ、安心して一緒に開発を進めることができました。
村田:私自身、何度も農園を訪れ生産者の人柄やテロワールに触れることで「この豆の良さを最大限に引き出したい!」という想いを強く持っています。これが”UCC らしい” のかもしれませんが、どうしても職人気質というか、素材や味へのこだわりが強くなりがちです。でも田中さんは、味だけではなく、「飲み心地」や、「このコーヒーを飲むことでどんな体験ができるか」というお客様に近い視点で意見を下さり、すごく参考になりました。
田中:UCCさんが生産者と良い関係性を築いて、いいものを作っているのはもう分かっているので、そういう点では「こうしてほしい」とこちらからリクエストすることはなかったですね。作り手という存在をリスペクトしつつ、そこにあるストーリーをどうお客様に伝えていくか、届けていくかということが私たちのブランドとしてのポリシーであり、役割なので、消費者の視点に立って開発することは意識していました。